レスポンシブ画像レイテンシ予算 2025 — レンダーパスの健全性を可視化する
公開: 2025年9月29日 · 読了目安: 4 分 · 著者: Unified Image Tools 編集部
レスポンシブ画像のスタックは CDN、エッジワーカー、CMS、端末側ヒューリスティクスまで広がります。明示的なレイテンシ予算がなければ、ヒーロー画像は LCP を外し、ロングテール端末では体感が急落します。本稿では、ブレークポイントごとに予算を割り当て、トレーシングと結びつけ、数値が崩れた瞬間にリリースを止める方法を解説します。
TL;DR
- まずサーフェスを棚卸し:ホームヒーロー、記事内画像、ギャラリー、メールなど。サーフェス × 回線クラスごとに予算を設定。
- 信頼できる数値を合成監視と実測両方から取得し、Performance Guardian に流し込んでドリフトを即座に把握。
- 予算をデリバリーレバーに結合:preconnect、priority hint、フォーマット構成、レスポンシブブレークポイント。
p95
が予算から外れたら Image Quality Budgets & CI Gates とロードベースラインで リリースを即停止。
予算アーキテクチャ
常に更新されるマニフェストを用意します。srcset
定義の近くに置き、ブレークポイントと予算を同時に進化させます。
サーフェス | 予算 (p95) | デバイス | メモ |
---|---|---|---|
ホームヒーロー | 2400 ms | デスクトップ / Wi‑Fi | ヒーローを preload、AVIF/WebP 配信、クリティカル CSS < 25 KB |
ホームヒーロー | 3200 ms | モバイル / 4G | fetchpriority="high" 、ブロッキング JS 回避、支配色プレースホルダーを inline |
記事内 inline | 1800 ms | 全端末 | レスポンシブサイズは 2 種まで、ネイティブ lazyload |
ギャラリーモーダル | 2000 ms | デスクトップ | 1 枚目を eager、次の 2 枚を prefetch |
メールヘッダー | 1200 ms | 全端末 | width/height を inline、最大幅 1200 px |
エスカレーションルール用の列も持たせましょう。例:モバイルヒーローが 3 デプロイ連続で超過したら、まず CDN のスマート変換を巻き戻し、次にヒーロースケジューリングを点検。
ステップ1 — 実測を網羅
- PerformanceObserver でヒーローレンダーを監視し、
largest-contentful-paint
をトレーシング層へ送信。 - カスタム属性を付与:
surface=homepage-hero
、variant=A/B
、connection=4g
。 - 同じラベルを合成監視でも使い、ラボ vs 実測を同じ ID で比較。
- Performance Guardian に週次エクスポートを取り込み、サーフェスごとの
p95
と予算を記録。
ヒント:ラボ用プローブは専用リージョンに置き、CDN ウォームアップで本当のリグレッションが隠れないようにする。
ステップ2 — 予算をデリバリー施策に結合
ボトルネックから着手します。
- ブレークポイント:
sizes
/srcset
を棚卸し。使われない幅を削り、モバイルヒーローの DPR は 2x までに。 - フォーマット:AVIF/WebP 交渉を有効化し、失敗時のみ JPEG にフォールバック。
- 優先度:主要ヒーローに
<link rel="preload">
、重要な inline 画像にfetchpriority="high"
。 - プレースホルダー:レイアウトを安定させるため レスポンシブ・プレースホルダー を配信。
どのレバーがどの予算を動かすかを記録。例:画像 CDN への preconnect
は 4G の first byte を 150〜250 ms 削ることが多い。
ステップ3 — ガードレール自動化
- CI 予算チェック:新たなブレークポイントが許容バイト数を超えたら Image Quality Budgets CI Gates が失敗するよう設定。
- コンテンツガバナンス:width/height メタデータや alt テキストのない CMS 公開をブロック。CLS/INP を守り、予算レビューを高速化。
- インシデントプレイブック:サーフェスごとにロールバック手順を作成。ヒーロー p95 が 3.3 s に達したら、ブレークポイントを戻すかパーソナライズを止めるか、順番を明確に。
ステップ4 — マニフェスト共有
レイテンシマニフェストをプロダクト、デザイン、パートナーに公開。併せて以下を添付。
- 四半期レビュー(グリーンを維持した項目・アラートを出した項目)。
- 主なリグレッションと根本原因。
- 予定している最適化(例:ヒーロー動画ポスターを AVIF 化)。
チームが予算レジャーを理解すれば、主体的に守り抜けます。
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