エクスペリエンスファネル・オーケストレーション 2025 — チーム横断でUI改善を継続するDesignOps手法
公開: 2025年10月2日 · 読了目安: 6 分 · 著者: Unified Image Tools 編集部
マーケティングが施策を投入し、サポートが問い合わせを受け、プロダクトがUIを改善する。2025年の大規模プロダクトでは、3部門が同じUX指標を見ながら高速サイクルを回す DesignOps が不可欠です。本稿では、エクスペリエンスファネルを指標化し、チーム横断で改善を継続するオーケストレーション手法を解説します。
TL;DR
- ファネルを「Discover → Try → Commit → Expand」に再編し、部門横断のSLOを設定する。
- UXログ・サクセス指標・サポートデータを メタデータ監査ダッシュボード に統合してトレーサビリティを確保。
- モーションやトランジションは アニメーションガバナンスプランナー と レスポンシブモーションガバナンス 2025 のガイドを遵守。
- KPIとは別に「改善SLO」を設定し、パフォーマンスガーディアン でINP/LCPを日次監視。
- レトロスペクティブをナレッジベース化し、マルチモーダルUXアクセシビリティ監査 2025 の指標も連動させる。
1. ファネル再編と指標設計
ファネルセグメント
フェーズ | 主担当 | 代表タッチポイント | 主要KPI | UX SLO |
---|---|---|---|---|
Discover | マーケティング | ヒーローページ、SNS流入 | クリック率、セッション数 | LCP ≤ 2.3s、視認性率 ≥ 95% |
Try | プロダクト | トライアルフロー、ガイド付きモーダル | 完遂率、離脱ポイント | INP ≤ 200ms、ヘルプ閲覧率 ≥ 40% |
Commit | サポート | 課金設定、契約確認 | サポートコンタクト率、CSAT | 解決時間 ≤ 15分、視覚/音声案内整合率 100% |
Expand | コミュニティ | アドオン設定、ケーススタディ | NPS、再購入率 | 導入ガイド読了率 ≥ 60%、エラー率 ≤ 0.2% |
各フェーズのSLOは、技術チームが改善できるUX指標を中心に設定します。マーケティング施策がUI負荷を増大させる場合でも、SLOを満たすことが前提となるため、施策設計段階でエンジニアリングとの協議が必須になります。
SLOアラートの設計
- パフォーマンスガーディアン のAPIを活用し、各フェーズのINP/LCPを日次で収集。
- サポートケース管理システムと連携し、UX障害が発生した際はSlackに自動通知。
- アクセシビリティ関連インシデントは マルチモーダルUXアクセシビリティ監査 2025 のステータスと同期。
2. データ統合と可視化
データソース | 更新頻度 | 保存先 | 主用途 |
---|---|---|---|
Web Telemetry | リアルタイム | メタデータ監査ダッシュボード | UX指標、ガードレール確認 |
Support Tickets | 5分毎 | Customer Data Platform | 障害分類、SLO違反通知 |
Feature Flags | コミット毎 | Git + CI | 実験ログ、ロールバック履歴 |
Design Tokens | 日次 | Design System Repo | ブランド整合性、アクセシビリティ属性 |
データ統合のポイントは、部門ごとに別れるログを共通の「ファネルID」で紐づけることです。マーケティングオートメーションのIDとサポートチケットIDを連携させることで、Discoverフェーズの施策が最終的にサポート負荷にどう影響したかを可視化できます。
3. ワークフローのオーケストレーション
- 週次ファネルレビュー: 各フェーズの担当がメトリクスを共有し、SLO逸脱やインサイトを議論。
- 改善スプリント計画: 課題が確定したら、DesignOpsが改善タスクをJiraに登録し、チーム横断でアサイン。
- 実装 & QA: エンジニアがUI改善を実装し、QAがアニメーションガバナンスプランナー と レスポンシブモーションガバナンス 2025 をベースに検証。
- リリース判定: SLOを満たすかをチェックし、必要ならばFeature Flagで段階的に展開。
- ナレッジ登録: 改善内容や実験結果をNotionに記録し、ファネルフェーズごとに索引化。
- エスカレーション: SLOを満たさないケースが続く場合、CxOレビューで施策やロードマップを見直し。
4. 自動化チェックリスト
- [ ] メタデータ監査ダッシュボード にファネルIDを追加し、データ突合を自動化。
- [ ] パフォーマンスガーディアン のスコアをLookerに連携し、リアルタイムのSLOモニタリングを実装。
- [ ] アニメーションガバナンスプランナー でモーション変更のレビュー手順をテンプレート化。
- [ ] サポートチケットのラベル自動付与をAIで行い、アクセシビリティ関連を即時分類。
- [ ] ファネルごとの改善施策を自動サマリー化し、週次レポートをSlack送信。
5. ケーススタディ: SaaS企業のグローバル展開
- 背景: 新リージョン展開と同時に問い合わせ件数が増加。マーケとサポートが別指標で動いていたため、改善優先度の判断が困難。
- 課題: Discoverフェーズでの動画活用がINPを悪化させ、Tryフェーズの離脱を加速。
- 対応:
- ファネルIDとSLOを導入し、各指標を メタデータ監査ダッシュボード に集約。
- パフォーマンスガーディアン でINPとLCPをモニタリングし、動画の遅延を検知次第プレースホルダーに切り替え。
- サポート側では音声案内とUIを同期するため マルチモーダルUXアクセシビリティ監査 2025 の指標を導入。
- 結果: Tryフェーズの離脱率が 18% → 10% に改善。問い合わせ件数は 35% 減少し、CSATが 8.1 → 9.2 に上昇。
まとめ
ファネル単位でUX指標とオペレーションを統合すると、部門ごとのサイロを壊しながら改善サイクルを高速化できます。SLOとナレッジを中心に据えたDesignOpsは、グローバル展開やAI駆動のUI改善でも強固な基盤となります。まずは既存ファネルの指標を棚卸しし、共通のSLOとデータパイプラインを構築するところから始めましょう。
関連ツール
関連記事
AI画像ブリーフ・オーケストレーション 2025 — マーケとデザインの合意を自動化するプロンプト連携術
Web制作で急増する生成AI画像のブリーフ共有とレビューを統合。マルチステークホルダーの合意フロー、プロンプトの差分管理、制作後のガバナンスを自動化する方法を解説。
アクセシブルフォントデリバリー 2025 — 可読性とブランドを両立するWebタイポグラフィ戦略
Webデザイナーがフォント配信を最適化するためのガイド。可読性、パフォーマンス、レギュレーション対応を踏まえた設計と自動化ワークフローを解説。
アダプティブマイクロインタラクション設計 2025 — Webデザイナーのための動きのガイドライン
ブランド一貫性を保ちつつ、入力デバイスやパーソナライズ条件に応じて変化するマイクロインタラクションを設計・実装するフレームワークを紹介。
デザインシステム継続監査 2025 — FigmaとStorybookを反復同期させる運用レシピ
FigmaライブラリとStorybookコンポーネントを崩さずに同期させるための監査パイプライン。差分検出、アクセシビリティ指標、リリース承認フローを解説。
画像メタデータ・プライバシー管理 2025 — コーダーのためのEXIF・IPTC自動削除フロー
EXIF/ITPC削除を軸に、GDPR/CCPAに準拠した画像ワークフローを設計するための詳細ガイド。検出・除去・監査・インシデント対応までをステップごとに整理。
マルチモーダルUXアクセシビリティ監査 2025 — 音声と視覚の統合体験を計測するガイド
音声UI・視覚UI・触覚フィードバックが交差する体験を品質担保するための監査設計。カバレッジ計画、計測スタック、ガバナンス手法を紹介。