アクセシブルフォントデリバリー 2025 — 可読性とブランドを両立するWebタイポグラフィ戦略
公開: 2025年10月2日 · 読了目安: 5 分 · 著者: Unified Image Tools 編集部
Webタイポグラフィはブランド体験の中核ですが、2025年はアクセシビリティ規制の強化やLCPの厳格化により「配信戦略」が成果を左右します。FOUT/FOITを最小化しながらブランドフォントを維持し、ユーザー設定(リーダーモード、フォントサイズ変更)に順応する設計が求められます。本稿では、Webデザイナーが主導できるフォントデリバリーのベストプラクティスを紹介します。
TL;DR
- タイポグラフィトークンを
type.tokens.json
として整備し、ウェイト/サイズ/ラインハイトをシステマティックに管理。 - フォントファイルは
woff2 + variable font
を基本とし、subset生成とライセンス管理を自動化。 - パフォーマンスガーディアン でLCP/INPへ与える影響をモニタリング。
- アクセシビリティの観点で
min font-size
、prefers-reduced-transparency
などユーザー設定を尊重。 - レギュレーション対応の証跡を メタデータ監査ダッシュボード に蓄積し、レビューの効率化を図る。
1. タイポグラフィトークンとスタイルガイド
トークン設計のポイント
カテゴリ | 例 | 備考 |
---|---|---|
font.family | brandPrimary , systemFallback | ライセンス別に分類 |
font.weight | regular: 400 , semiBold: 600 | Variable font の wght を対応付け |
font.size | sm: 14px , lg: 18px , xl: clamp(24px, 2.8vw, 32px) | clamp でレスポンシブ化 |
line.height | body: 1.6 , heading: 1.25 | 読みやすさ指標を明記 |
- Notionのスタイルガイドでは、各トークンに「用途」「最小文字数」「言語差分」を記載。
type.tokens.json
を Storybook に読み込み、コンポーネントの見た目と合わせてレビュー。
多言語・可変フォント対応
- ラテン系とCJKの両対応が必要な場合、variable font とサブセットを分割し、
unicode-range
を明示。 - 多言語画像品質監査 の考え方をタイポグラフィにも適用し、提案内容を各ロケールで検証。
2. フォント配信の最適化
ビルドとキャッシュ戦略
fonts/
brand-variable.woff2
brand-variable-subset-latin.woff2
brand-variable-subset-cjk.woff2
subfont
やglyphhanger
で使用文字列を抽出し、サブセット化。Cache-Control: public, max-age=31536000, immutable
を設定し、バージョン付きファイル名で更新。- Service Workerで
stale-while-revalidate
を実装し、オフラインでも読みやすさを確保。
FOUT/FOIT対策
- CSSで
font-display: optional
を基本とし、ヒーロー要素のみswap
を指定。 - 初回描画用にシステムフォントと似たメトリクスを持つフォールバックを選定。
- プレースホルダー生成 を組み合わせ、フォント読み込み中のヒーロー画像崩れを軽減。
3. アクセシビリティと規制対応
文字可読性
- 各トークンに
minContrast: "AA"
を設定し、背景色の変更時にアラートを発生させる。 letter-spacing
は 0.12em を上限に、視認性向上時のみ適用。- ユーザーがブラウザ設定でフォントサイズを200% に拡大してもコンポーネントが崩れないか、E2Eテストに
font-scale.spec.ts
を追加。
規制準拠の証跡
- メタデータ監査ダッシュボード にフォントライセンス、利用範囲、更新日を登録。
accessibility-review.md
をPull Requestテンプレートに組み込み、WCAG 2.2対応項目をチェックリスト化。- EUのA11yレポート提出用に、
font-audit-report.pdf
を自動生成。
4. パフォーマンス計測とKPI
KPI | 目標値 | モニタリング方法 |
---|---|---|
LCP (フォント影響を含む) | ≤ 2.3s | パフォーマンスガーディアン のRUMダッシュボード |
First Text Paint | ≤ 1.3s | Synthetic + Chrome Timing API |
フォント失敗率 | 0% | Service Workerログ + Cloud Logging |
可変フォント総サイズ | ≤ 240KB | ビルドレポート |
font-performance.mjs
がビルド後のフォントサイズとサブセット状況を検証し、閾値超過でCIを失敗させる。perf-alert.yaml
にLCPのしきい値を設定し、Slack通知を自動化。
5. ケーススタディ:B2B SaaSサイト
- 背景: ブランド変更に合わせて見出しフォントを刷新。ただしLCPが悪化し、営業チームから問い合わせ。
- 対策:
type.tokens.json
でサイズを再設計し、サブセットを分割。font-display
を見直し、Service Workerでキャッシュ戦略を改善。 - 結果: LCPが 2.9s → 2.1s に改善。アクセシビリティ監査での指摘もゼロに。
まとめ
フォントはビジュアルだけでなく、読みやすさ・パフォーマンス・法令順守を支える重要な要素です。トークン設計と配信自動化を組み合わせれば、Webデザイナーが中心となってブランドタイポグラフィを守りつつ、高速でアクセシブルな体験を提供できます。今日からフォントワークフローを見直し、継続的な改善サイクルを回しましょう。
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