HDR→sRGBトーンマッピング実務 2025 — 破綻させない配信フロー
公開: 2025年9月22日 · 読了目安: 3 分 · 著者: Unified Image Tools 編集部
TL;DR
- 目的は「心地よい白」—ハイライトの滑らかさを最優先
- 10bit→8bitではデバンディング+ディザを併用
- P3→sRGBは肌/空/緑の飽和チェックを厳格に
内部リンク: P3→sRGB 変換で崩れない色管理 実務ガイド 2025, P3 画像配信ガイド 2025 — sRGB フォールバックと実機確認の手順
実務フロー
- ソース特定(HDR10/PQ/HLG, P3/Rec.2020)
- トーンマッピングとガンマ/膨張・収縮の設定
- sRGB/8bitへの安全な落とし込み(バンディング対策)
- ソフトプルーフ/モニタリングで再確認
品質確認
- 肌色/空/緑で破綻がないか
- ICCプロファイルの一貫性
代表的な落とし穴と対策
- 白飛びと彩度低下の同時発生
- 症状: ハイライトで階調が潰れ、全体の彩度が落ちる
- 対策: トーンカーブを肩で緩やかに圧縮し、彩度はLCh空間で補正
- 10bit→8bitでのバンディング
- 症状: グラデーションに等高線状の段差
- 対策: ブルーノイズディザ + 軽いデバンディング(3x3)
- P3→sRGBでの肌の赤浮き
- 症状: 肌や赤系の布が過飽和
- 対策: 変換前にソフトプルーフ、HSLで局所的にサチュレーションを抑制
自動化のフロー(例)
- メタ読み取り(PQ/HLG, 色域)→ 変換プリセット選択
- ハイライトマップ生成 → ロールオフ適用
- 10bit→8bit のみディザ/デバンディングを注入
- P3→sRGBは肌検出マスクで穏やかな彩度抑制
- QA: チャート(肌、空、緑)で閾値チェック+サンプル目視
チェックリスト(出荷前)
- [ ] 白基準と中間調の一貫性(ΔE2000 < 2 目安)
- [ ] ハイライトの滑らかさ(視覚評価 + ノイズ指標)
- [ ] プロファイル埋め込みとストリッピングの方針統一
まとめ
ハイライトの扱いと8bit落とし込みが品質を左右します。自動化で初期値を安定させ、肌・空・緑の3点でQAする運用が最小コストで破綻を防ぎます。
実装レシピ(疑似コード)
type ColorSpace = 'P3' | 'BT2020' | 'sRGB';
type Transfer = 'PQ' | 'HLG' | 'sRGB';
interface SourceMeta { cs: ColorSpace; tf: Transfer; bitDepth: 10 | 8 }
function tonemap(src: Buffer, meta: SourceMeta) {
// 1) OETF/OOTFを逆適用し、線形空間へ
// 2) ハイライトマップを作成し、ロールオフ(肩)を適用
// 3) P3/BT.2020 → sRGB でガマットマッピング(肌優先)
// 4) 10→8bit ではディザ + 軽いデバンディング
// 5) ICC埋め込みと検証
}
測定ポイント
- ΔE2000(肌/空/緑の3チャート)
- グラデーションの等高線検出(SNR/ノイズ指標)
- ハイライトの階調保持(ヒストグラムの肩の滑らかさ)
公開前チェック
- [ ] 出力カラープロファイルが想定どおり(sRGB)
- [ ] 8bit化での段差が視認不可(ディザ適用)
- [ ] 白基準が連載/特集内で揃っている
FAQ
Q. P3→sRGBで彩度が落ちます — A. LChでの彩度補正を小幅に入れ、肌領域にはマスクで控えめに。
Q. 8bit化でバンディングが消えません — A. ブルーノイズディザと弱いガウシアンで軽減し、出力後に再評価。
Q. 端末ごとに見えが違う — A. ICCの有無を統一し、閲覧面のキャリブレーション差を前提にQAします。
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