IPTC/XMP と EXIF の安全運用 2025 責任ある開示のために
公開: 2025年9月22日 · 読了目安: 1 分 · 著者: Unified Image Tools 編集部
Googleのガイドラインに準拠しつつ、責任ある情報公開を行うために、画像メタデータの方針を明確にしましょう。本稿は“残す/消す/置換する”の判断軸を示します。
なぜ今メタデータ運用なのか
検索エンジンは著作権・作成者・ライセンスの明示を推奨し、反対に個人情報(GPS/端末IDなど)の公開は好ましくありません。適切なメタデータは検索表示の品質と責任ある開示の両立に寄与します。
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基本方針
- 個人特定に繋がる EXIF(GPS, 端末ID等)は公開前に削除
- 著作権表示や作成者は IPTC/XMP の Caption/Creator/License を活用
- 角度補正は Autorotate → ピクセル回転して保存(EXIFに依存しない)
残す/消す/置換の判断表(例)
- 残す:
IPTC:Creator
IPTC:Copyright
XMP:UsageTerms
XMP:Title
XMP:Description
- 消す:
EXIF:GPS*
EXIF:SerialNumber
XMP:Device
MakerNote
- 置換:
XMP:Credit
(組織名へ統一)、XMP:Source
(媒体名を規定値へ)
関連: EXIF削除と向き補正, 安全なメタデータ方針
実務ワークフロー
- 収集: 画像の出所/権利情報をキャプションへ記載
- クリーニング: EXIF を削除し、必要な IPTC のみ残す
- 指紋付け: ファイル名にハッシュを付与(キャッシュ制御にも有効)
- 配信: オリジンは最小限保持、CDN変換で圧縮・形式変換を分担
- 監査: ランダム抽出でメタ逸脱を検出し、必要ならロールバック
# 例: exiftool での最小化
exiftool -all= -TagsFromFile @ -icc_profile -copyright -artist -overwrite_original *.jpg
形式ごとの注意
- JPEG: ICC と著作表示を明示保持。サムネ用は別ファイルで運用
- PNG: テキストチャンク増加に注意。不要チャンクは削除
- WebP/AVIF: メタ互換差を理解し、JSON-LD で補完する方針を併用
監査チェックリスト
- [ ] 位置情報が残っていないか
- [ ] 免責・利用条件が記事本文と一致しているか
- [ ] 代替テキスト(alt)が内容を正確に表すか
- [ ] JSON-LD(Article/News/FAQ)とメタの整合が取れているか
- [ ] OGP画像の著作・ライセンス表記が適切か
よくあるトラブルと対処
- GPS が残存していた: exiftool プロファイルに
-gps:all=
を追加 - 回転が崩れた: Autorotate だけでなくピクセル回転まで反映して保存
- CDN でメタが落ちる: 画像内と構造化データの二重化でリスク分散
リスクと管轄(RACI)
- 主なリスク
- 個人情報の漏えい(GPS/端末ID/顔情報に紐づくID)
- 権利表記欠落による再配布/二次利用トラブル
- ニュース/災害写真の文脈誤解(Caption 不整合)
- 役割分担(例)
- Responsible: 編集者(最終確認)
- Accountable: デスク/法務(ポリシー承認)
- Consulted: 撮影者/制作会社
- Informed: 配信/運用チーム
監査プロセス(サンプル手順)
- 収集: 出所・ライセンス・肖像権の確認資料を添付
- 正規化: 文字コード/改行/言語タグ(
XMP:LangAlt
)の整理 - クリーニング: EXIF の個人特定子を一括削除、必要 IPTC/XMP を復元
- 整合: キャプション/記事本文/JSON-LD の一貫性チェック
- 承認: 監査ログを発行(Who/When/What を記録)
# 監査ログ付与(擬似)
exiftool -XMP:History="audited;2025-09-22;editorA" -overwrite_original *.jpg
ポリシーテンプレート(例)
目的: 責任ある公開と検索性の両立
必須項目: Creator, Copyright, Title, Description, UsageTerms
禁止: GPS, SerialNumber, DeviceID, MakerNote, FaceData
例外運用: 取材現場の緊急時は編集責任者が承認
保管: オリジナルは安全区画に保存、公開ファイルは最小限
自動化ワークフロー(Node/CLI 擬似コード)
import { execa } from 'execa'
async function sanitize(input: string) {
await execa('exiftool', [
'-all=',
'-TagsFromFile', '@',
'-icc_profile', '-copyright', '-artist',
'-XMP:Title', '-XMP:Description', '-XMP:Creator', '-XMP:UsageTerms',
'-overwrite_original', input,
])
}
# 既存IPTCをテンプレに統一
exiftool -XMP:Credit="ACME Inc." -XMP:Source="ACME Media" -ext jpg ./out
置換・匿名化パターン
- 顔/個人の紐づけリスクがある場合、キャプションで文脈補足し顔認識タグは保存しない
XMP:dn:child
のような内部タグは公開用には書き出さない- サムネイル/OGP 用の別書き出しで、メタは最小構成+本文で十分に説明
構造化データとの整合
- Article JSON-LD の
author
copyrightHolder
license
を IPTC/XMP と一致 thumbnailUrl
のファイルと IPTC タイトル・説明を同期- ニュース系は
newsArticle
やdateModified
の正確性を担保
例: 公開前レビュー票(抜粋)
- [ ] Caption と本文が矛盾していない
- [ ] 免責・利用条件が本文と一致
- [ ] GPS/Serial/MakerNote が完全削除
- [ ] Creator/License が XMP/JSON-LD と一致
- [ ] OGP 画像の権利表記が適切
実運用の落とし穴と回避
- 複数ツール編集で文字化け → UTF-8/改行 LF へ正規化してから処理
- CDN の再エンコードで ICC 落ち → 画像内と構造化データの二重記録で冗長化
- Autorotate だけで配信 → 一部クライアントで崩れ。ピクセル回転して保存
FAQ
Q. すべてのメタデータを削除すれば安全?
A. 権利表記や作成者まで消すと、検索面でも責任面でも不利です。最小限は保持。
Q. OGP 画像にもメタは必要?
A. 画像内は最小で良いですが、HTML 側の構造化データに責任表記を必ず入れて整合を。
まとめ
メタデータは“全部消す or 全部残す”ではありません。責任ある開示と検索品質を両立するため、公開前チェックリストをルーチン化し、逸脱時に即時修正できる監査フローを整えましょう。
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