サムネイルのセーフエリアと比率 2025 — CTR を落とさない実務トリミング

公開: 2025年9月20日 · 読了目安: 2 · 著者: Unified Image Tools 編集部

はじめに

同じ画像でも表示環境で見切れが起きます。CTA や顔・テキストを安全に収める「セーフエリア」を定義しましょう。

本稿では主要比率ごとの安全域、SNS/検索/カード UI での切れやすい領域、テキスト可読の物理サイズ目安、そして実ワークフローを提示します。CTR や保存率に直結するため、初期案は自動化でも最終は人手レビューを推奨します。

関連記事: 伝わるトリミング設計 — アスペクト比・注視点・SNSサムネの最適化OGPサムネイル設計 2025 — 見切れない、重くない、伝わる

比率と配置

  • 1:1: 正方サムネ。中央寄せ、安全域は上下 12–15%
  • 16:9: 横長。テキストは左/中央 40–60% に寄せると安定
  • 4:3: 説明図や人物写真にバランス

余白とF字・Z字視線

視線は F/Z パターンで走ります。テキストや顔を“左上〜中央”に寄せると初速が出やすい傾向があります。右下は視線の減衰域になりやすいので、ロゴのみ配置など「軽い要素」に限定します。

推奨セーフエリアの目安(比率別)

以下は「切れにくさ優先」の初期値。ブランドや媒体特性で微調整してください。

比率左右セーフ上下セーフ主被写体の配置
1:110%12–15%中央 40–60% に要点、ロゴは右上か左上
16:910%10–12%左〜中央 35–60%、右下は軽い要素のみ
4:38–10%10–12%人物は視線の向きに 10% 以上の余白を確保

注: プラットフォームの自動トリムや角丸マスクでさらに 2–4% ほど実効領域が狭まる場合があります。

実務フロー

  1. 画像トリミング で比率プリセットを選択
  2. 重要要素を安全域内に配置(ガイドを自作でも OK)
  3. SNS/OGP は OGPサムネイル作成 で最終調整

自動化と人手のハイブリッド

  • 第1案: 顔検出/サリエンシーを使うスマートクロップ(人物・商品軸)
  • 第2案: ルールベースでセーフエリアへ再配置(コピーやロゴ)
  • 最終: デザイナー/編集が 30 秒レビュー -> OK/修正の2択に集約

この運用で「速度×事故率」のバランスが良くなります。

プラットフォーム別の注意

  • YouTube サムネ(16:9): 上下 10–15% は見切れを想定。中央 60% に顔/メインコピー

  • X(旧Twitter)カード: 自動トリムで左右が詰まりやすい。中央寄せ + 上下安全域を厚めに

  • 検索結果の画像カード: 可視領域が小さいため、文字面積は 20–30% に抑制

  • Instagram フィード: 1:1 が基準。縦長クロップ時も 1:1 サムネで中央 50–60% に要点

  • Facebook/LinkedIn OGP: 1200×630 近辺。上下 12% の“見切れバッファ”を意識

  • ショッピングカード: 価格/バッジ領域が被る前提で、被写体とテキストを中央へ寄せる

数学メモ(安全域ガイド線)

画像幅を W、高さを H とすると、上下 12% のガイドは y = 0.12H と y = 0.88H。左右 10% は x = 0.1W, 0.9W。

// 例: 1200x630(OGP 近似)
const W = 1200, H = 630;
const guides = {
  left: 0.1 * W, right: 0.9 * W,
  top: 0.12 * H, bottom: 0.88 * H
};

人物の視線方向に対しては、進行方向側の余白 e を 0.1W 以上確保すると安定します。複数人物のときは主役の視線を優先し、残りはセカンダリ領域(右上/右下)に退避。

object-position を活かしたカバーフィット

<div class="aspect">
  <img src="hero.jpg" alt="" />
</div>
.aspect { width: 100%; aspect-ratio: 16/9; overflow: hidden; }
.aspect img { width: 100%; height: 100%; object-fit: cover; object-position: 40% 45%; }
  • 主被写体がやや左上なら object-position: 40% 45% のように補正
  • ブレークポイントで object-position を切り替えても OK

QA チェック

  • [ ] 重要要素が上下左右 10–15% 内側に収まる
  • [ ] モバイルでの切れがない(実機確認)
  • [ ] 文字は最小 14–16px 相当で可読

追加チェック:

  • [ ] 明度/彩度コントラストが十分(WCAG AA 目安)
  • [ ] 顔・目線方向に十分な余白(左右 10% 以上)

A/B テストの簡易設計

  • メインコピー 6–9 語 / 補助 0–6 語で2案
  • 被写体スケール 90% vs 75%
  • 1 週間 / 1,000imp で CTR × 保存率の総合指標を比較

FAQ

  • Q: 自動トリミングと手動、どちらが良い?
  • A: 初期案は自動でも、最終は手動確認が安心です。サムネは CTR に直結します。
  • Q: 文字サイズの下限は?
  • A: 物理 3.5–4mm 相当が一つの目安。CSS px 換算はデバイス依存なので、主要端末での実機確認が最終判断です。
  • Q: 角丸で切れます。
  • A: カード UI の角丸半径 r を見込み、四隅の 6–8% は“絶対に置かない”ゾーンにします。

まとめ

比率ごとの安全域を決めておくと、制作がぶれず事故も減ります。まずは安全域を明文化しましょう。


付録: セーフエリアの CSS ガイド表示

<div class="thumb">
  <img src="thumb.jpg" alt="thumb" />
  <div class="safe"></div>
</div>
.thumb { position: relative; width: 600px; aspect-ratio: 16/9; }
.thumb img { position: absolute; inset: 0; width: 100%; height: 100%; object-fit: cover; }
.thumb .safe {
  position: absolute; inset: 12% 10%; /* top/bottom 12%, left/right 10% */
  outline: 2px dashed rgba(0,0,0,.35);
}

付録: シンプルなセーフエリア計算ユーティリティ

type Guides = { left: number; right: number; top: number; bottom: number };

export function createGuides(width: number, height: number, xSafe = 0.1, ySafe = 0.12): Guides {
  return {
    left: xSafe * width,
    right: (1 - xSafe) * width,
    top: ySafe * height,
    bottom: (1 - ySafe) * height,
  };
}

export function isInsideSafeArea(x: number, y: number, g: Guides): boolean {
  return x >= g.left && x <= g.right && y >= g.top && y <= g.bottom;
}

関連記事

トリミング

伝わるトリミング設計 — アスペクト比・注視点・SNSサムネの最適化

配置に応じたアスペクト比の選び方と注視点の保全。カード/ヒーロー/ソーシャルで崩れない絵づくりの実践。

Web

アクセシビリティ実務の画像 — alt/装飾/図解の線引き 2025

スクリーンリーダーで破綻しない画像の実装。装飾は空alt、意味画像は簡潔に、図解は本文を要約。リンク画像とOGPの注意点も。

基礎

画像最適化の基本 2025 — 勘に頼らない土台づくり

どのサイトにも効く、速くて美しい配信のための最新ベーシック。リサイズ→圧縮→レスポンシブ→キャッシュの順で安定運用に。

Web

Favicon & PWA アセット チェックリスト 2025 — マニフェスト/アイコン/SEO シグナル

見落としがちなファビコン/PWA アセットの要点。マニフェストのローカライズや配線、必要サイズの網羅をチェックリスト化。

変換

フォーマット変換の戦略 2025 — WebP/AVIF/JPEG/PNG を使い分ける指針

コンテンツ種別ごとの意思決定と運用フロー。互換性・容量・画質のバランスを取り、最小の労力で安定化。

正しいカラー管理とICCプロファイル戦略 2025 ─ Web画像の色再現を安定させる実践ガイド

デバイスやブラウザ間で色ズレを起こさないためのICCプロファイル/カラースペース/埋め込み方針と、WebP/AVIF/JPEG/PNG各形式における最適化手順を体系化。